邪魔 (Part 1 / 2)
今日は朝から川崎へ出かけた。
軽く用事を済ませ、時間は9時前後。
これから髪を切って、久しぶりにヒトカラ行って、本屋行って、余裕があれば漫喫も行って・・・などと大方の予定を立てたが、まずは腹ごしらえ。
朝からがっつり食べる気力と胃のスペックは無かったのでマクドナルドでコーヒー飲みながら適当に済ませよう。
店内に入るとそれなりに客がいた。客層も若い人から中年、お年寄りの人までまばらであった。一人くらい座れるだろうとそのままレジへ並ぶ。
いつも通りクーポンを使ってポテトLを頼もうとしたが、店員のおばさんに断られてしまった。
朝マックというものには特有のメニューがあり、平常のメニューは頼めないシステムになっているらしく、朝弱な俺はそれを知る由もなかった。
平静を装い、コーヒーとナゲットを頼む。受け取った後は席を探す。
入口手前の方はほとんど席が埋まっていたので店内奥へと進む。
前を60歳前後くらいであろうおじさんがゆっくり歩いている。人で賑わっていたこともあり、通路は人が一人通れるくらいの道幅であった。
いやにゆっくりと歩いていたので少しイライラもしたが、朝から些細なことで怒りを覚えるのは損だ。自分の前をゆっくり歩かれるなんてよくあることだと心に言い聞かせ、後ろを付いていく。
奥の方はそれなりに空いていた。壁際二人掛けの席に腰を下ろした。
コーヒーを飲んで落ち着く。
普段は前日に夜更かしをして、昼か眠りが深い時には夕方ごろまで寝てしまう俺が朝早く起きて、誰に気を使うことなくコーヒーブレイク。
三連休最高のスタートを切れたと充実感に溢れた。
すると横に誰かが立ち止まった。顔を上げるとそこにはさっき前を歩いていたおじさんが立ち止まっていた。
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奴は唐突に
「今日は何日だっけ?」
と口に出した。
俺に話しかけたのだろうと気付き咄嗟に返答する。
「9日ですね」
本当に9日であっていただろうか、記憶に自信はあったが念のためスマホで日付を確認する。画面には「2月9日 土曜日」と表示された。
日付は確認できただろう。だが奴は立ち止まったままこの場を離れない。
嫌な間が空いた。何秒くらい経っただろう。気まずくなった俺は話しかける。
「何かあるんですか?」
口をついて出た簡単な疑問である。
「19日に年金がもらえんのよ」
「ああ、なるほど」
60歳前後という見立ては間違っていなかったようだ。
自分の見究めが正しいのを確認してまた少し気分が良くなったが、そう考えるのと同時に嫌な予感がよぎった。
奴は向かいの席に座った。会話を続けたいらしい。
その時は気分が良かったし、自分よりいくつも年上の人を蔑ろにするのは気が引けたので、まあいいかと軽い気持ちでいた。
奴は自分の身の上話をした。
最近テレビを買ったこと。
昔はパン屋で働いていたこと。
寮に住んでいて、次のごはんは11時であること。
結婚をしていないこと。
きっと寂しいのだろう。そう思った。
だがそれは大きな間違いであると後に気付くことになる。
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続きはPart2で。