邪魔 (Part 2 / 2)
邪魔 (Part 1 / 2)の続き。
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自分の横を、今度は別の男が立ち止まった。奴と同じくらいの風貌である。
何かを話している。知り合いだろうか。
先ほど話していた寮に一緒に住んでいる人とかそんな関係だろう。
奴とひとしきり話し終えるとその男は別の席へ戻った。その席には数人ほどまた同様の風貌の人たちがいた。どうやら他にも知り合いがいるらしい。
奴は対面に座ったまま。
一緒に行かないのかと少し落胆した。いつまでいるのだろう。
俺が席を立たない限りいなくならないんじゃないか?
店を出たら一緒に出てくるかも?
もしかしたら電車に乗っても付いてくるかも?
少し不安になる。まあいざとなれば走って逃げよう。
男は60代だし持久走には少し自信があるので大丈夫。
さっきの男がいる方を指して、俺は奴に聞いた。
「あの辺りの人は知り合いですか?」
「うん、そう」
なんとなく分かってきたような気がする。
「どういった知り合いなんですか?」
「・・・まあ色々ね」
奴は答えなかった。
この空気にもそろそろ居心地が悪くなり、手を付けていなかったナゲットを食べだした。奴はナゲットを見た。
そして、奴はついに本題を切り出した。
「200円くらいある?」
やはりそうだ。
「ありますけど何ですか?」
分かっていても聞いた。
「いやちょっと何か飲みたいなって」
確信する。
奴は”乞食”であった。ネットスラングとして使われる「乞食」とは違う。
正真正銘本物の乞食だ。
奴は寂しいからではなく、乞食するために俺に話しかけたのだ。
もちろん金を渡すはずもない。こんな奴にやる金は無い。はっきりと断った。
無性に腹が立った。
こんなどうしようもない奴のために年金を払っているのかと考えると反吐が出る。
「マックはいいよね、暇つぶせるし」
何を言ってるんだこいつは。何も買ってない奴が座っていい席はない。
早く帰りたくてナゲットをそそくさと食べる。
奴は恨めしそうにチラッとナゲットを見た。
見るな。俺のナゲットだ。俺が金を出したんだから食うのは俺だ。
そう思いつつもなんとなくモヤモヤする。不快。コーヒーの味もあまり分からなかった。
最後の一つを食べ終わった。
奴は俺にお金を出す意思がないことをわかると、11時に出る飯のために寮に帰るとか言って席を立った。
奴は
「じゃあまたね」
と言い、なぜか握手を求めてきた。
再会などない。二度と会いたくない。それでも握手はした。
その後は俺の肩を叩いて
「頑張っていい彼女見つけろよ」
と言ってきた。
余計なお世話だ、俺に触るな。
冗談などではない。言葉の通り「触るな」と思ったのはこれが初めてである。
奴はいなくなった。
俺はコーヒーを喉の奥へ流し込んだ。このままいるとまた別の乞食が来るかもしれない。そう考えると気が急いてしょうがなかった。
席を立ってゴミを捨てる。店を出る前にトイレへ行ってよく手を洗った。
散々だ。