燃える腸
◆急性胃腸炎
■28日 AM2:00。
じわじわと主張してくる腹部の痛みを、無視できなくなった。
トイレには8回。腹は痛いが糞便は出ない。
下痢や便秘などによる痛みではないのだろう。
直前に食べた物を思い出した。
サバ、サーモン、ソイ、イクラ。
その日は父親の知り合いからの届き物があり、食卓はまるで竜宮城かのように、鮮やかな海の幸たちが、所狭しと並べられていた。
しかしながら、我々のよく知る浦島太郎は残念ながらもれなくバッドエンドであり、それは 本"浦島太郎" においても同様であったのだ。
■28日 AM7:00。
あれから5時間経ち、腹部の痛みは尋常じゃないものとなっていた。もはや居ても立ってもいられない。じっとしていることが難しい程だった。
父親の車に乗せられて病院へ。
到着してすぐにトイレに向かったが、相変わらず何も出ず、出るのは弱音と情けない溜息だけである。
本当に痛い。痛い。痛い。
額からは脂汗が滲み、問診票を書くのもギリギリな程である。その後は熱を測り、血圧を測った。熱は37.0℃だった。そしてまたトイレへ行った。
無限かと思われた時間はいつしか過ぎ去り、病室へ呼ばれた。前日食べた物を聞かれたり、ベッドに寝転がらせられて腹部を押されたりなど、定型化されているであろう処置を施され、「急性胃腸炎」との診断を言い渡された。
腹痛に耐えながらスマホで調べた知識を元に、一つ聞いてみた。
「アニサキスとかは関係無いですか?」
「無いですね~。あなたの場合は下腹部、つまり腸のあたりに痛みが出ていますが、
アニサキスの場合は胃なので。
それにアニサキスだった場合、
痛みはこんなものじゃないですよ」
そのあとは処方された薬を飲んで寝た。2日後の今、ようやく痛みは引いた。
我々は現代医療に生かされているのだ。
私は生まれてこの方、骨折をしたことが無いし、大きな病気で患って入院したことも無い。
たかが胃腸炎ごときでこの弱りようだ。
私は今回の経験を基に、 「死は救済である」ということを悟った。